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花澤大介、ネオファイトの洗礼を浴びる

話はまたネオファイト。ひさしぶりの韓国大会ということもあり、現地取材を試みた。6.4『NEOFIGHT12』は関係者もいることだし、試合開始一時間前には会場に行こうと思って準備していた。開催場所については“ソウル市内のテクノマート”ということはわかっていたが、場所がうろ覚えだったので、韓国の格闘技関係者に電話で聞いた場所に行ってみると、どうやらまったく違う場所のテクノマートを教えられていたらしく、散々探した挙句、その会場からは一時間以上も離れた別のテクノマートで大会が開催されているということが判明。

ひさしぶりの渡韓だったが、なんという韓国ワールド。してやられてしまった感アリアリだが、ここは韓国。自分の目でしっかり場所を確認しなかった自分が悪い。そこから急遽、別会場に直行したものの、会場に到着したときには大会はかなり進んでおり、ちょうど第4試合の女子キックの試合が始まるところだった。

ガーーーン。取材のお目当てにしていた花澤大介13選手の試合(第2試合)は、すでに終わっていたのだった。韓国の記者にどんな試合だったか聞くと、「1Rはハナザワがテイクダウンをたくさん奪ったけど、2Rはちょっとバテたかな。打撃をもらって判定で負けちゃったよ」とのこと。判定は妥当だったのか不安になったので聞いてみると、「確かに微妙ではあったけど、大騒ぎするほどおかしいものではなかったよ」という答えだった。

だが、それはあくまでも韓国人の感じる判定についての感想だ。どこの国でも多かれ少なかれ、ホームタウンデシジョンというものはある。大会終了後、花澤選手とセコンドの方がいたので、話を聞いてみると、判定についてもそうだが、何よりもルールに面食らったようだ。そう、ネオファイトは異常に寝技のブレイクが早い団体で、かつては寝技30秒ルールを設けていた団体でもある。

IMG_7162.jpgaadad.jpgパスガードしてすぐにブレイクをかけられたものもあったという。花澤選手のセコンドはネット上で話題となった合気道の達人・柳龍拳と闘って勝利した岩倉豪さんだった。岩倉さんは寝技の攻防にまるで理解のないレフェリングとジャッジに対して「こんなの見たことないですよ」と憤慨していた。

上記の事情によって自分は試合が見られなかったので、韓国で6月20日に放送されるというネオファイトの中継を見るまでなんとも言えないが、事前にブレイクの早いルールに聞かされていたら、多少展開は変わっていたかもしれない。寝技の得意な花澤選手にとっては、残念な結果となったが、海外でのムチャな仕打ちというのは韓国に限らず、どこにでも起こりうること。これを糧に、プロ選手としてさらに成長していってほしいと思う。逆に、ネオファイトはいい加減、グラウンド攻防の流れを理解した合理的なレフェリングを心がけてほしい。

帰国後、花澤選手のセンコドの岩倉さんがこの試合のビデオの一部と観戦記を「EAST-END」というサイトに掲載している。そこでは花澤選手の試合の動画も見られるようになっている。花澤選手サイドは、今回対戦したKTTのソ・ドゥウォン選手とはパンクラスのリングで再戦を望んでいるという話もあるという。パンクラスとネオファイトはずっと交流関係にあり、タイミングさえ合えばリマッチも可能だろう。

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総合格闘技で初!? 3 vs 3のチーム対抗戦

IMG_6736.jpgちょっと話はさかのぼるが、6.4 ネオファイトでは格闘技界では珍しい3対3のチーム対抗戦が行なわれた。1Rごとに対戦相手が変わっていって判定も3Rトータルで行ない、チームの勝利を決めるというもの。ネオファイトはさらに、この中に打撃ルールもミックス(笑)。中には一本勝ちのラウンドや判定にもつれ込んだラウンドもあり、それを3Rトータルでジャッジするのはややこしいが、要は勝ち抜かない柔道の団体戦のようなものだ。

この対抗戦はチーム・マックス vs 藝人(イェイン)MMAというチーム同士の戦いだったが、印象に残ったのはボッコボコの殴り合いになった第2試合の立ち技打撃マッチ。韓国格闘技関係者が「これは相手をつかまないドン・フライ vs 高山善廣ですね」と言っていたが、試合する機会のなかった韓国人の心の叫びが聞こえてくるかのような気迫の入った試合で、会場も大盛り上がり。こういう後先考えない試合をする選手を第一試合でドンドン使えば、ほかの大会にもいい起爆剤となるだろう。

試合の機会が少ない韓国で、新人の選手に経験を積ませるのが目的というこのチーム対抗戦。どうせなら全員の体重を近くして勝ち抜き戦とかにしてもおもしろいかもね……って、それじゃあ、まるっきりリングスの国別対抗戦じゃん! ……そういえば、チーム対抗戦って11年前の1998年にリングスが盛大にやってたね。あれは早すぎた試みだったんだな。無差別の対抗戦で先鋒がスーパーヘビー級のタリエルとか、いま考えるとありえない光景が続出した大会だった(詳細は各自調査)。

リングス同様、寝技のブレイクが異常に速いネオファイトは、かつてブランドン・リー・ヒンクルも参戦しており、パンクラスの渡辺大介との対戦も実現させている。大会を開けば毎回レフェリング問題などでバッシングされるのに、しぶとく生き延びている不思議な団体である。

※※※おまけ※※※

IMG_6891.jpgijohiygu.jpgIMG_6892.jpgIMG_6987.jpg




 




 

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『UFC99』雑感

少しし遅れて『UFC99』も観た。『WEC41』、STRIKEFORCEを立て続けに観たあとなので、なかなか興味深かった。WECに比べればやはりUFC中継の映像は安定感があるという感じ。まぁ、それがひとによってはマンネリに感じるかもしれないが。

vsadfsda.jpgUFC初のドイツ大会だったが、やはりアメリカの観客よりもグラウンドの展開への理解が低いような気がした。アメリカでの復帰戦なら宇野選手のカムバックも温かく拍手で迎えられたのかもしれないが、ドイツでは日米対決だからかあまり反応もなし。試合でもかなりブーイングが飛んでいた。アンダーカードでドイツの選手が2選手出ていたのだが、そのときの会場の雰囲気はどうだったのだろうか。

■ライト級5分3R
○ スペンサー・フィッシャー[3R終了 判定3-0]宇野薫 ×
「12年以上のプロMMA経験」「勝利で最も多いのはサブミッション」という以外に、「UNFLAPPABLE」(危機に直面しても動じない)と紹介された宇野薫。スペンサー・フィッシャーとの試合を主導していたのは、間違いなく宇野選手だった。キレのあるタックルを積極的に繰り出したし、スプロールされても状況に合わせて素早く反応していく様はさすがという感じ。相手のフィシャー陣営も1R終わりのインターバルに、「ブーイングは気にするな! パーフェクトな試合ができているぞ」と檄を飛ばしていたので、相手のタックルにどう対処するか、しっかり研究してきていたようだった。

だが、宇野選手はテイクダウンに手間取ってしまい、要所でフィッシャーの打撃をもらってしまう。3Rの残り一分で宇野選手がマウントを取ってパウンドで攻め立てたが、あの時間がもう少し長ければ勝敗はひっくり返ったかもしれない。マストでなければ1Rはドローだし、3Rは宇野選手だと思ったが、結果は3-0。決してダイナミックではなかったが、テクニカルでキワの攻防がギッシリ詰まった攻防だった。ドイツの観客がそれを理解するのに、何年ぐらいかかるのだろうか。

■ヘビー級5分3R
○ ミルコ・クロコップ[1R KO]ムスタファ・アルターク ×
ミルコの相手は格下の選手だったが、身体の張りや反応はよかったので、少なくとも一時の最悪なコンディションとは違って見えた。最後のKOの前にミルコのサミングが入っていたことが、リプレイで明らかになっていたが、あれは入っていなくても勝敗に大きな影響はなかったと思う。ただ、ミルコは1R最初の方から突っ込んでくる相手のおでこをずっとオープンハンドで制していたので、あの場面でなくてもサミングは起こりやすい状態だった。次はDREAMという話もあるが、

■195ポンド契約5分3R
○ リッチ・フランクリン[3R終了 判定3-0]ヴァンダレイ・シウバ ×
ヴァンダレイはまだ32歳だけど、かつてのギラギラとした剥き出しの獰猛さは影を潜め、いまではちょっとアスリートっぽくなった感じ。試合中に足を滑らせる場面が多く、ダメージの蓄積を感じさせるが、それでも多少沈滞気味だった『UFC99』の会場を熱狂させるあたりはさすがのメインイベンター。
いまも昔も変わらないヴァンダレイの遮二無二に剛腕フックを連打するスタイルは、研究されまくっていて、フランクリンには距離を取られてストレート系で先手を打たれていたけど、自分の持ち味を充分に出し切ったと思う。初のドイツ大会を大団円で終わらせたのは、結局ヴァンダレイだったし、勝ったフランクリンよりもずっと輝いて見えた。今後は試合間隔をあけながら、ミドルで意味のある相手とやっていってほしい。

※※※

全体的にUFCはWECに比べてやはり大味に感じた。言いかえればそれはダイナミックで迫力がある、ということなのだが、明らかにテクニカルな宇野 vs フィッシャーの試合は浮いていたし、会場の観客のニーズにはあっていないように見えた。WECにもライト級はあるわけで、現在はこの階級だけ二部リーグ制になっている。そうしている意味もよくわからないし、ヴァーサスTVとスパイクTVで放送局の違うWECとUFCだが、ブランドの格差をどうすべきかの議論は行なわれているとも聞く。どうせなら、UFCはウェルター級以上にして、WECにBJペンを登場させてWECのPPVに踏み切るとか、WECにも“UFC提供試合”として派手な重量級の試合を1つ、2つ組むとか、そんな工夫があってもおもしろいのでは。
 

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STRIKEFORCEを観た

STRIKEFORCEがエリートXCの所有する資産を買収して、大きく変わった点と言えば、やはり映像のクオリティ。前回ショータイムで放送された新生STRIKEFORCEは、荘厳な記者会見の映像からしてメチャクチャ格好よくて、痺れたものだった。STRIKEFORCE中継の中で、“NEW ERA”(新世紀)をキーワードにしていたが、いつでも同じつくりのUFC中継には少し飽きがきていたので、すんなり心に響くものだった。

sada.jpg今回は、前回の新生STRIKEFORCE中継の時に比べれば、それほど驚かされる映像ではなかったが、それでも荘厳な音楽とともにスローモーションを中心にした映像とインタビューカットが交互に映し出される作りは、UFCとは違う個性となっていた。解説は前回メインを飾ったフランク・シャムロック。ケニー・フロリアンに劣らず、こちらもとにかくよく舌が回る。

以下、試合の感想。

■ライトヘビー級5分3R
○ マイク・ホワイトヘッド[3R終了 判定3-0]ケビン・ランデルマン ×
試合前に実況が「この試合は早く終わるでしょう」と言ったように、テレビ中継の第一試合を飾るべく、ダイナミックな試合が期待されたカードだったが、内容はちょっと期待外れ。とくに、ランデルマンが非常に消極的だった。とにかく前に出ないし、スタンドでパンチをまったく出さない。2R終了までで10発もパンチを出さなかったのではないか。3Rに唐突にメガトンパンチを放ってホワイトヘッドをダウンさせ、得意のパウンド連打で追い詰めたが、余力のあるホワイトヘッドに凌がれて判定負け。

■ウェルター級5分3R
○ ジョー・リグス[3R終了 判定3-0]フィル・バローニ ×
ランデルマンに続き、“筋肉三兄弟”の三男坊、フィル・バローニが登場。だが、ウェルター級(77.1キロ)まで絞ったにもかかわらず、バローニの動きにキレはなく、リグスの打撃をしこたま食らって判定負け。いまさらだが、やはりハンマーハウス勢の闘い方はかなり前時代的すぎる。ファイターとしての自分の個性やファイトスタイルはなかなか変えられないだろうが、何か変革を図らないと、このまま埋没してしまうだろう。

■180ポンド契約5分3R
○ ニック・ディアズ[3R チョーク]スコット・スミス×
81.6キロ契約で行なわれた試合だが、体重を上げたにもかかわらず、ニック・ディアズの強さはハンパなかった。スコット・スミスは、前回のベンジー・ラダック戦での大逆転勝利が記憶に新しいタフなファイターだが、10センチもリーチで勝るディアズにものすごい数のパンチを被弾。とくにボディへのパンチを効かされてダウン。最後はチョークで極められてしまった。それにしても、“兄貴”ディアズのパンチの当て勘は素晴らしい。ラダックの強烈な打撃でも音を上げなかったスミスをかつての五味のように、徐々に削って最後は心ごと折ってしまった。これでまだ25歳なのだから、ディアズは本当に侮れない。ナチュラルヒールのキャラもあって、STRIKEFORCEには欠かせない存在となりそう。次はMMA復帰を明言しているKJヌーンズとの再戦が観たい。

■ヘビー級5分3R
○ プレット・ロジャース[1R KO]アンドレ・アルロフスキー ×
アッという間の秒殺劇。ここの最近の試合を観ていても、ブレット・ロジャースの潜在能力は高いと思っていたが、この結果には驚いた。ワンパンチで試合が決まってしまうのが、ヘビー級の試合だが、アルロフスキーはちょっとロジャースを甘く見ていたのではないか。様子を見ようとしている間にやられてしまった。でかくても動けるロジャースはハングリーで危険な存在。次はアリスターとの試合が観てみたい。

■182ポンド契約5分3R
○ ジェイク・シールズ[1R ギロチン]ロビー・ローラー ×
この試合も82.6キロ契約。エリートXCのミドル級とウェルター級王者対決。最初はテイクダウン狙いのシールズのタックルをうまく切っていたローラーだが、シールズはスタンドでミドルを打ちながら距離を測り、組みついて金網際でギロチンへ。ローラーは一度持ち上げたものの、すぐにタップ。シールズは日本で修斗、パンクラス、GCMなどで闘っていたときは判定決着が多いという印象だったが、最近では8連続一本&KO勝利を収めており、まさに全盛期。ぜひともUFCの“神の階級”でその実力を証明してほしいが、政治的に難しいだろう。ディアズはシーザーグレイシーの同門だし、闘う相手を見つけるのが難しそう。DREAMのウェルター級GPの王者と闘うのならおもしろいかもしれない。

STRIKEFORCEの中継では『アフリクション』のヒョードル vs ジョシュ戦をかなり煽っていたので、両団体は交流を深めていきそうな雰囲気。格闘技界的には『アフリクション』が第3回大会で終わって、STRIKEFORCEに吸収されたりすると、UFCに対する巨大な対抗馬ができておもしろいのだが……はたしてどうなるか。

テレビマッチの最初にハンマーハウス勢がミソをつけたものの、その後の3試合はいい内容だった。個人的MVPはニック・ディアズ。
 

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『WEC41』を観た

少し遅れたが、WECとSTRIKEFORCEのテレビ放送分を観ることができた。
簡単な感想を記しておきたいと思う。

adsfdfsa.jpgまず、『WEC41』。ヴァーサスTVで制作・放送されているWECの映像は、基本的にはUFCとさほど手法や方法論は変わらないが、中継のモチーフとなっているのはトライバルなタトゥーとメタリックな音楽。個人的にはUFCよりも好き。今回は大会場に多くの人が詰めかけている様子が映し出されていて、スケール感も増していてスポーツ中継としての醍醐味も向上しているように見えた。解説に登場したケニー・フロリアンも単にダナ・ホワイトに気に入られているだけでなく、饒舌な解説は安定感バッチリ。

試合のクオリティという点でも、WECの中継はUFCと比べるとその平均点は高い。UFCにはGSPやLYOTO、アンデウソン、BJペン、ブロックレスナーといった各階級のモンスター級のチャンピオンは、どの試合でもダイナミックでハイレベルな試合を見せてくれるが、UFCのテレビマッチでは時折、迫力重視のメガトンマッチが唐突に組まれているが、正直言って大男のドつき合いは観ていて楽しくはあるが、格闘技マニアにとっては大味でレベルの低い試合であるとも感じられる。

だが、WECにはそういう試合のクオリティのバラつきが少ない。階級が軽いだけに、総じて全選手の細かなテクニックの濃縮具合が違うのだ。しかも、WECにもミゲール・トーレスや、マイク・ブラウンといった常人離れした王者も生まれ始めているので、そういった点でもWECの中継はもっと日本の格闘技ファンに観てもらいたい番組である。

■フェザー級5分3R
○ ジョン・グリスピ[1R ギロチンチョーク]ジェンズ・パルヴァー ×
北米MMAシーンにおいて、技と技のキワで非常に重要な技となっているギロチンチョークが見事に極まった試合。テイクダウンに行ったのはパルヴァーだったが、僕にはパルヴァーがそうした流れについていけていないように思えた。UFC/WECを支えてきたベテランのパルヴァーはWECの会場でも大きな声援を浴びていたが、そんなパルヴァーを取り残し、良さをまったく消してしまうほど、現在のMMAの流れは速い。

■ライト級5分3R
○ ドナルド・セローニ[1R チョーク]ジェームス・クラウス ×
WECデビューのクラウスを百戦錬磨のセローニが一蹴。セローニの格が違いを見せつけて圧勝。キックボクシングで29戦28勝無敗のレコードを持ちつつ、MMAでの極め技はすべてサブミッションというセローニは、GSP、ラシャド・エヴァンスを育てた名トレーナーのグレッグ・ジャクソンのチームの一員。グラウンドのタイプ的には青木真也選手と近いものがあるが、グラウンドでは下から多彩なラバーガード、三角、オモプラッタ、腕十字、ペダラーダを繰り出すなど、じつに多種多彩。『WEC43』(日時未定)ですでに決定しているジェイミー・ヴァーナーとのリマッチが非常に楽しみ。日本のDREAMや『戦極』のライト級トップファイターとの試合が見たくなる好選手。

■バンタム級5分3R
○ アントニオ・バンヌエロス[3R終了 判定2-1]スコット・ジョーゲンセン ×
じつに不可解な判定。3Rを通してずっとジョーゲンセンがプレッシャーを与え、試合を支配していたと思うのだが……。WEC/UFCにも理解不能な判定はある。判定を発表したあとの観客は大ブーイング。だが、その部分はテレビ中継で即カット。バンタム級でこれほど獰猛な打撃を繰り出せるジョーゲンセンは逸材だと思う。

■フェザー級5分3R
○ ホゼ・アルド[1R KO]カブ・スワンソン ×
跳びヒザ蹴りでわずか8秒のKO勝利劇。ホゼの強さ爆発。コイツは本物だ。同門のマルロン・サンドロといい、ノヴァ・ウニオンのフェザー級の選手の充実ぶりは凄い。WECで鉄壁の強さを見せるマイク・ブラウンとどんな試合をするか早く観てみたい。

■バンタム級5分3R
○ セス・ディークン[1R 三角絞め]ロナルド・ペレス ×
誰だ? アメリカのMMAはキックボクシング化していてサブミッションでの決着が少ないって? この試合ではディークンが芸術的な跳びつき三角絞めを試み、徐々にペレスを締め上げて勝利。こういうアグレッシブな選手は主催者にとってもありがたい存在だろう。

■ライト級5分3R
○ アンソニー・ペティス[1R ギロチン]マイク・キャンペル ×
ペティスはテイクダウンされ際のギロチンを披露し、テイクダウンされても下から足を効かせたガードワークから一気に三角絞めを極めるなど、なかなかのテクニシャン。今後が楽しみな選手だ。

■フェザー級タイトルマッチ5分5R
○ マイク・ブラン[5R終了 判定3-0]ユライヤ・フェイバー ×
ブラウンが終始、安定した強さを発揮してタイトルを防衛。ブラウンの安定感とタフさはちょっと異常。グラウンドで必ず首から、というかギロチンを極めに行くのが印象的だった。たぶん、トライして失敗しても悪いポジションにはならないという自信のある攻め方なんだろう。フェイバーは早くから拳を痛めたとのことだが、それがなくてもやはり負けていたと思う。前回のブラウンとの試合は、フェイバーがバタバタとして、自分で金網のリバウンドをつけてブラウンのパンチに飛び込んでいった“一人カウンター”状態だったが、今回は地力の差がはっきり現われてしまった。

極端な半身からアンオーソドックスなフェイバーの打撃はブラウンに完全に読まれていたし、ブラウンはパンチに対する距離の取り方も優れていた。グラウンドではフェイバーが有利になる場面はほとんどなく、内容的にはブラウンの圧勝。ブラウンはまったくと言っていいほどキックを出さないタイプだが、それが逆に闘い方に安定感を生んでいるのかもしれない。とにかく堅実で穴のない王者だ。期待されるホゼ・アルドとの試合でアルドがどれだけその牙城を崩せるのか、非常に楽しみだ。

KIDはブランク明けの試合だったが、それほど状態が悪かったようには見えなかったし、フェイバーも衰えたわけではない。新世代のMMAファイターの技術レベルがドンドン上がっているということだろう。

STRIKEFORCEについてはまたのちほど。
 

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NKB観てきた

IMG_8440.jpg今日は小野瀬邦英プロデュースのNKB後楽園ホール大会を観てきた。K-1以外のキック系の観戦は久しぶりだったが、メジャーイベントではあまり感じられないナマの感情が感じられて非常に新鮮だった。

かつてのプロレスもそうだったが、大会は技術もスタミナもない新人がガチャガチャとパンチを振り回すドタバタした前座から始まる。試合が進んでいくにつれてだんだんと選手の実力やテクニックも向上し、試合のクオリティも徐々に上がっていく。セミやメインに登場する選手たちには、会場全体を盛り上げる力量と魅力があり、大会全体のパッケージとして古典的ともいえる段階的組織構造できていて、ちょっとした様式美さえ感じた。

前座の選手の試合は、失礼なのは重々承知ながらも、つい「ホンットに下手クソだなあ……」という思いがよぎる。だが、現在メインを張るスター選手たちも、このような泥臭い過程を通ってみんな大舞台を踏んだのだ。そして、観客もまたデビュー間もない新人のドンくさい姿を見守っていたからこそ、彼らが大きく成長していったとき、大きな思い入れをもって応援できるのだ。それはどんなスポーツでも、奥深く楽しむ方法の一つに違いない。

プロレスでたとえると、30代の我々が新日本プロレスの中邑真輔や後藤洋央紀、棚橋弘至といった選手がトップを張っているのを見て、どこか心の中でおもしろく感じ、「まだ顔じゃねぇ」と言いたくなるのと似ている気がする。メジャーの舞台に突如として舞い降りた超新星や天才児は、センセーショナルで華やかではあるが、何の色も付いていないために古くからのファンにとっては感情移入しにくいのだ。それは我々が彼らの成長物語を充分に目の当たりにしていないからである。

もちろん、マスクもよくスタイリッシュな新世代のレスラーたちが若い女性層を中心に支持を得ていて、団体の運営に貢献していることはわかる。それはわかるのだが、会場ではどうしても古くから見ている永田さんや天山、中西といった選手のほうに感情移入してしまう。さらに時代を遡れば、後塵を拝してきた長州力が藤波に噛みついた事件や“前座の鬼”として長年不遇の時期を過ごした藤原喜明が長州力を襲撃したことに乗れたのも、そこにはレスラーの鬱屈した感情がリアルに発散されていたからだ。

90年代には、永田、天山、中西の世代でさえも、いまの棚橋、中邑の世代と同じように見ていた。「おまえら顔じゃねぇ」と。だが、最近になって彼らに思い入れを持てるのは、我々が彼らの成長物語を知っているからだ。素材は最高なのに、不器用でなかなか芽が出ず、K-1に出て惨敗するなど、迷走した期間の長かった中西学、総合格闘技でヒョードルやミルコにアッサリ秒殺されて強さの幻想が吹き飛んでしまった永田さん、大一番でコケたり悪役を演じようとしても“いい人”を隠せない天山……。レスラーとして彼らの紆余曲折を知っているからこそ、彼らから人間臭い魅力を感じるのだし、不遇の時代や失敗そのものが彼らを観る上でのスパイスとなり、レスラーの年輪そのものがドラマとなる。

最近では新日本プロレスや全日本プロレスも、第一試合から派手な技を見ることができるし、単なるメインクラスのカードを盛り上げるためだけの試合ではなくなっている。いまや“前座”ではなく、単なる“第一試合”になっている。そういった現在の形式を否定するつもりはないが、“タメ”が効いていないと爆発の規模も弱まってしまうのではないかとも感じたりする。『DREAM.9』での所英男の復活に心から感動したのも、彼のここ数年の低迷と、その中であがき続けた彼の姿があったからだ。

NKBの会場には、自分がかつて観ていたプロレス会場でのピラミッドが存在していたし、観客の多くは選手の身内や友人ばかりで、リングの上にいる“俺たちの選手”の攻防に一喜一憂し、大声援を送っていた。選手もその応援に熱いファイトで応え、会場は熱のある空間となっていた。初めて観る選手ばかりであったが、セミ、メインの試合になる頃には、自分の気持が自然と高揚していくのを感じていた。メジャーイベントで選手が激しい試合をしていても、妙に静かでセコンドの声だけ鳴り響く寒々しい光景とは正反対の風景がそこにあった。

試合を見ながら、昔、自分がキックでは日本キック連盟が一番好きだったことを思い出した。スター選手が多くいて、打倒ムエタイとの試合を掲げていた新日本キックや全日本キックではなく、なぜか自分は泥臭くてマイナー感の漂う日本キックの試合を好んで観ていた。それは日本キックのマイナー感に惹かれたわけではなく、かつてのパリーグのように親身になって応援できる選手たちとファンの距離感が好きだったのだ。

自分は日本キックの舞台でうんざりするほど何度も行なわれた小野瀬 vs ガルーダテツの抗争も「またやるのかよ」と思いながらも楽しんでいたクチだが、現在彼らは引退してトレーナーとなって自分たちのジムを開き、愛弟子を育ててリングで闘わせている。

aadf.jpg決してオーソドックスではなかった小野瀬やガルーダと同様、彼らの育てる選手は型にはまらず、ノビノビとした闘い方をしており、個性的で魅力的だった。とくに滑飛タイジ選手は、小野瀬、ガルーダらがもっていた泥臭さに加え、目を奪われるような華やかさがあってすぐに好きになった。

現役時代は小野瀬に負け続けたガルーダテツの愛弟子が小野瀬のファイターたちをなぎ倒す――。師匠と弟子の二世代にわたるライバル構造がいまも楽しめるなんて、昔から見ているファンにとっては贅沢なことである。現役を引退しても彼らが自分たちが作った世界を別の形で守り続けていることに、団体やこのスポーツに対する愛情が深く感じられたし、選手の歴史というものは、現役を引退してもそれで終わりではないということに気付かせてくれた。

すべてが洗練された選手たちばかりで構成されるメジャーイベントも楽しいが、ピラミッド型のヒエラルキーの中で選手の息の長い成長物語を見守るのもまた味わい深い。この日は、いつまでも変わらないスポーツの楽しみ方をあらためて教えてもらった気がした。
 

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