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チョン・ジェヒとは何者か?

jaehee.jpgK-1 MAXでの山本“KID”徳郁のKO負けは凄まじいインパクトがあった。当日、僕はコメントブースでこの試合を観ていたが、僕だけでなく観ている関係者や記者すべてが騒然としてKIDのKO負けにド肝を抜かれていた。

KIDをKOしたチョン・ジェヒは、勢いのあるKIDのパンチを冷静にスウェーで見切って、カウンターでアッパーを組み込んだコンビネーションを当てていたように、非凡なセンスの持ち主であることはわかった。しかし、いったいどれほどの実力者なのかについては、情報が少なくわかりづらいという点もあるので、MAX開催前に韓国の『MFIGHT』が掲載していたチョン・ジェヒのインタビューを紹介したい。

kamipro.comでの韓国格闘技情報で紹介することも考えたが、K-1 MAXの前は『UFC100』などの注目大会が多かったこともあり、残念ながらその掲載を見送っていた。ここであらためてその記事を紹介したい。インタビューは7月8日に掲載されたもの。

※※※※※以下、『MFIGHT』からのインタビュー全文※※※※※※

――タイではどのように練習してきたのか? 
ジェヒ プーケットで8ヵ月、バンコクで3ヵ月、合わせて約11ヵ月練習していた。できれば韓国で練習したいが、どうしても環境がよくないので本場でレーニングしたと思った。とりあえず3年間の計画だったが、とりあえず1年やってみて、ムエタイとK-1はちょっと違うなと感じている。今回の試合が終わったら、トレーニング場所を日本に移すかもしれない。

――ニックネームは“闘鶏”になっているが、理由は? 
ジェヒ 自分は背が低いのでインファイトをするしかないし、性格的にも闘うときに、相手の顔色を見て闘うのが好きではないから。ただ、練習をずっと続けているとあまり緊張もしなくなったし、ずいぶん余裕もできた。以前は何も考えずに闘っていたが、いまは相手の弱点を見つけて冷静に試合をしようとしている。

――ムエタイとK-1はスタイル的に違いがあるのでは? 
ジェヒ まず基本的なリズムはムエタイのスタイルに行くだろう。1ラウンドのゴングが鳴れば何度か蹴ってみて相手を把握するつもりだ。だが、様子を見るのは30秒だけだ。そのあとは新人のときのようにインファイトに徹するだろう。3ラウンドは最初から考えないでいる。 2ラウンド中に勝負の賭けに出るだろう。KIDが倒れるか、自分が倒れるか、二人のうち一人はマットに寝ているだろう。日本の記者がインタビューしにきて「KIDのパンチは本当に強い」と言っていたが、自分にはよくわからない。自分も簡単にKOできる選手ではないし、全然怖くない。真っ向勝負をする。

――KIDはどんな選手だと考えるか? 
ジェヒ じつは彼は自分の好きな選手だった。兵役で軍隊にいるときからKIDを観ていたが、常にKOを狙うスタイルなので好きだった。もちろん硬そうで筋肉質な身体も好きだ。ただ、打撃の技術はトップクラスであるとは思わない。打撃も練習した方法によってできたものではなく、変則的で本能的なスタイルだと思う。本能を重視する点は自分と似ている。違いがあるとするならば、KIDはエリートアスリートだったが、自分はジムでトレーニングを積んだという点だろう。怖くはないし、むしろ試合をするのが楽しみだ。

――KIDは日本の格闘技界で最高のスター選手だ。韓国の選手として、このようなチャンスはめったにないが、今回の試合はあなたにとってどんな意味があるのか?
ジェヒ 簡単に言うとLOTTO(ギャンブル)のようなものだ。KIDは日本の英雄だし、誰も自分が勝つとは思っていないだろう。彼は強い選手だから。勝てば大当たりだが、負ければただ2000ウォン(約150円)を失なうだけだ。俺に失なうものは何もない。ギャンブルで勝つかどうかは自分の能力次第だ。韓国の60キロ級に、こんな選手がいるということを日本の観衆の目に焼き付けたい。

――KIDをどのように分析しているか? 
ジェヒ とりあえずスピードがいい。パンチは一発もらえばダウンしてしまうかもしれないが、俺もバカではないので簡単にはもらわない。当てられるものなら当ててみろ。当てられない自信はある。自分は簡単にKOされる選手ではない。

――今回の試合で準備したことは?
ジェヒ 特別な作戦はない。もともと左の蹴りが自分の中心的な武器だが、今回は相手がサウスポーなので右足の蹴りをたくさん使うことになると思う。KIDは自分よりも体格がいいので、タイでは大きな選手を相手にスパーリングをたくさんしてきた。ダウンもさせられたし、目にもアザができた。相手の動きにどう反応するかという作戦はある。だが作戦は作戦であって、リングの上では本能的に動くつもりだ。

――日本のK-1本戦は初めてだが、緊張すると思うか? 
ジェヒ 自分ではまったく緊張しないと思っているが、ほかの人は自分が緊張すると思っているようだ。タイのラジャダムナンスタジアムで試合をしたことがあるが、最初はタイの観客の熱気とその施設に驚いて緊張した。だが慣れてからはよくなった。日本でもある程度は緊張しそうだが、それは自分自身で解決しなければならない問題だ。

――日本での試合なので、一方的な応援とKIDに対するホームアドバンテージがある可能性もあるが、それは気にするか? 
ジェヒ 少し前にMAキックに出場したことがある。自分が登場したときは冷たい雰囲気だったが、相手の選手が入場すると応援する声が大きくなった。それは仕方のないことだ。当時は少し頭にきたが、開始のゴングがカーンと鳴れば観衆もよく見えないし、今回も試合に集中するだけだ。

――実際、韓国内のファンの一部でも、今回の試合ではKIDが勝つと言う人もいる。それについてはどう思うか? 
ジェヒ よくわからない。ネットを見ていると、自分が負けそうな気になる。それから「冥福を祈る」という書き込みも見た。だがそれほど気にはしていない。自分は常に挑戦者の立場にいる。常に挑戦しようとしているが、自分のほうが有利だとは思わない。今回の試合は絶対につまらないものにしたくない。おそらく倒れているのはKIDのほうだろう。前にも言ったが、今回の試合はチャンスでもあり、危機でもある。俺はこのチャンスをモノにしなければならない。試合で日本に二度行ったが、一度目は5ラウンドのあいだずっとキックを食らって車椅子に乗って帰国した。二回目の試合では5ラウンドで判定負けをしたあと血尿が出た。日本での試合はダウンを奪えなければ勝てないので序盤から強く前に出なければならない。当時の試合でも身体が限界に至ったが、我慢したら心臓がバクバクしたのを感じた。これまで日本ではよくない思い出が多いが、今回はいい結果が出ることを願っている。

――今回の試合は別にして、闘いたい選手はいるか? 
ジェヒ 本当に尊敬している選手だが、パク・ビョンギュ館長(日本では朴龍のリングネーム)、そして日本の石井宏樹と闘ってみたい。2人とも個人的に好きな選手だ。もちろん、いまは自分の実力が彼らのレベルにまでは到達していないことは知っているが、チャンスがくればまたタイに飛んで練習を積んで闘いたい。最近、自分の名前を出してくれたキム・ドンヒョン(UFCファイターとは同名異人。現在は『武神』で活躍中)ともチャンスがあればムエタイの恐ろしさを見せてやりたい。過去に自分に勝ったことのあるチョン・ビョンとも闘いたい。あの試合が終わってから彼に勝つために一生懸命練習した。

――最後に、あなたが負けると言っている人々に一言あればどうぞ。
ジェヒ 多くの人々が俺が負けると考えているのは自分も知っている。彼らが願うこと、そして日本人が何を望んでいるか、よく知っている。俺はその多くの人に堂々と反抗するだろう。妥協はしない。このチャンスを掴むために5年もトレーニングしてきたんだ。自分のすべてをこの試合に注ぎこむ。この試合は立ち技の試合であり、自分のプライドがかかっているので絶対に負けることはできない。決してつまらない試合はしない。

※※※※※引用終わり※※※※※※

印象として、キックボクシングをするうえで決して環境がいいとは言えない韓国にあって、チョン・ジェヒは強くなるため、成功するために、わずかな可能性にかけて地道に本場のタイでムエタイに取り組み続けた男だった。自分の置かれた立場をよくわかっていて、驕りも怖気づいてもいなかった様子。タイからコーチを呼んでトレーニングしたKIDとは違って、1年間タイで技術を磨いてきたハングリーさが実を結んだ結果となったようだ。

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